PINK PANTHERESSとは? デビューアルバム「HEAVEN KNOWS」をリリース

MILESMILES!

ニューアルバム「ヘヴン・ノウズ」をリリースしたUKシンガー、ピンクパンサレス。このZ世代を代表するアーティストは、いかにして世界を席巻したのだろうか?前作「To Hell with It」の爆発的ヒットから2年。改めてその音楽性を紐解いてみよう。

ストリートをTシャツとリップド・ジーンズ姿で歩くピンクパンサレスは、普通の女の子と何ら変わらない。「好きなアーティストは?」の質問に「ピンクパンサレスよ!」と堂々と答える。等身大の彼女が目指すものは、他者ではなくほかの誰でもない彼女自身である。

2023年11月10日、メジャーデビューアルバム「Heaven Knows」をリリースした。このZ世代を代表するアーティストの活躍は、怒涛の勢いで1年を周遊したようだ。

ニューアルバム「Heaven Knows」

2月3日付、ニューヨーク州ブロンク出身のラッパーIce Pice(アイス・スパイス)から、インスタでの熱烈なラブコールを受け実現したリミックス「Boy’s a Liar Pt 2」は、ビルボードチャートで最高3位となった。本曲は、「Heaven Knows」の先行シングルとなる。アルバム「Heaven Knows」を一聴すれば、ヒップ・ホップそのもの、ドラムン・ベースを多用したイギリスのブラックミュージックである。

世間の評論家からベットルームからストリートミュージックへと昇華した作品として評価を受けた前作のミックステープ「To Hell With It」(2021, parlophone and Elektra Records)よりもさらに重厚なサウンドプロダクション、前作に引き続き多才なビートを提供すMuraMasaとの信頼性が垣間見れる。

そして何と言っても彼女の音楽の本質は、言葉にある。NMEマガジンのインタビューでは、「ビートは気にしてない。ペンが1番大事ね」。サウンド面より言葉に重きを置いている。そしてピンクパンサレスの詩における音節の統一性、フックにおいて韻の踏み方については、まさに詩人と言っていい。

恋の痛みを赤裸々にたたたくと思いきや好きなものに対する愛を歌う。Mosquito 」では、富と名声、恋人との別れを歌い、英国人ラッパーCentral Ceeが客演した「 Nice to Meet You」ではteenager の安易に生と死を語りたがる情緒不安定な感情を吐露し、R&B歌手Kelelaとデュエットの「Bury Me」では、強烈な自己陶酔と孤高感、「Internet Baby」は、「Needy guy」”かまってちゃん”と呼ぶことで、tiktokの人々へのアンチテーゼを歌っている。「Ophelia」では、恋に喪失した感情をシェイクスピアの名作ハムレットの悲劇に登場するヒロインオフィーリアを題材にした曲。パンチラインの「I See My Life Flash Again」、は人生を振り返ること。ピンクパンサレスの恋愛に対する情念がなんと強烈に描かれていことだろう。若干22歳の彼女は、フランス詩人ランボーのように早熟なアーティストである。

PinkPantheressとは?

ピンクパンサレスは、2001年4月18日生まれ。両親はケニア人の母とイギリス人の父親のミックス(※日本でハーフと呼ぶが、ここでは、混血を意味するmixed raceとする)である。イギリス、サマセット州バース生まれだ。人口8万の小さな町では初のポップ・アーティストであり初のブラックのアーティストである。イギリスのブラックミュージック界におけるSade、Ella Maiに続くアーティストになるのは間違いない。すでに日本のMacのCMソングに同アルバムの曲「Nice to Meet You」がオンエアされているところを見ると日本への来日は近いかもしれない。

世界的ラッパーKendrick Lamar からのオファー

ピンクパンサレスは、映画「Black Panther」や「Barbie」にも曲を提供、lil Uzi Vertとも共演するなどグローバル・アイコンとして注目を浴びている。Kendrick Lamarも彼女にアプローチした。

i-d.vice.comによれば、映画館でデート中にスマホの着信音が鳴ったと言う。しかし館内のためサイレントモードに変えてその場では通話に出なかったが、実はケンドリック・ラマー本人からのスタジオ・セッション依頼だった。おそらくケンドリックとのコラボは近いうち実現するだろう。

21年BBCのインタビューで事実上聴覚の80%を失うという衝撃的なニュース報道があったが、なんとか乗り越えたようだ。tiktokの画面からから世界の音楽シーンを周遊し始めた。NPRのインタビューでピンクパンサレスの今後について「女性版リックルービンになりたい」と語ったのは、非常に興味深い。

現在、ピンクパンサレスは、カナダを含む全米ツアーを2024年春頃からスタートする。日本でのツアーはまだ決定していないが、アップルのCMソングで「Nice to Meet You feat. Central Cee」が使用されるあたり来日も期待したいところだ。