BLACK PANTHER PARTY REVISITED/ WHAT ACTIVITIES DO BLACK PANTHER PARTY HAVE? Part 2 ブラックパンサー党の活動内容と指針・地域社会への貢献 (その2)

Bobby Seale and Huey P. Newton
Bobby Seale, to the left and Huey P. Newton, who founded Black Panther Party in Oakland, California. image:wikimedia
RACE ISSUE

PART 1に続くブラックパンサー・パーティ特集。2回目は、ブラックパンサー党が、彼らのコミュニティでどのような活動を行っていたのかを紐解く。

ヒューイ・P・ニュートンとボビー・シールは、ブラックパンサー党(以下、BPP)を組織化するため10 Point Platform and Program(10項目綱領)を作成した。

これはBPPが目標とする行動計画であり、米国におけるマイノリティ(少数派)の権利・平等を合衆国憲法に準えて作成されたもの。資本主義社会を痛烈に批判し、米国社会で危険視された社会主義的イデオロギーを前面に押し出した哲学思想だ。

このプログラムについて、「欲深いアメリカの資本主義的支配の搾取的抑圧のもとで歴史的に苦しんできた黒人たちの政治的欲求であり、400年間ためにためた黒人たちの悲痛な叫びである」とボビーは言った。

つまりBPPは、リッチな富裕層が私服を肥やし貧困地域にいる黒人はほったらかしにされている状況下で、もはや国の援助を必要としない組織を作り上げることを目標とした。アフリカ大陸から連行され、米国で奴隷として過酷な労働を強いられ、奴隷解放宣言(1965年)以後も、KKKなどによる白人至上主義者らの迫害、人種隔離を掲げるジムクロウ法、あらゆる社会の不平等措置が変わらずにある社会に対し、黒人は黒人だけで守る社会を構築することを望んだ。

1964年、ジョンソン大統領のもと、米国国民のだれもが自由と平等の権利をもつことが許される公民権法が制定された。しかし法律上の差別が無くなっただけで黒人をはじめとした有色人種の社会的地位は、現実的に何も変化していなかった。

法律上の差別が無くなったとは、つまり公共の場(レストラン、ホテル、映画館をはじめとしたサービス業のあるすべての公共施設、選挙の保障、教育、雇用などの)における人種差別禁止を保障したもの。あからさまな人種差別は無くなったかに見えたが、黒人をはじめとしたマイノリティ(少数派)達への差別と偏見は根強く残っていた。余談だが、筆者が東部のニューヨークの州都オルバニーや南部ミシシッピー州を車で旅行した時、同じ町内に白人地区と黒人地区が2つに分離され、黒人地区のほうに行くと、はるかに廃墟が多く目立っていた。あの有名なNAACP(全米黒人地位向上協会)の建物は、今にも崩壊しそうなほど寂れていた。2020年現在においてもなお、所謂、systematic racism(制度的人種差別)と呼ばれる社会構造によってマイノリティの社会的地位は改善したとは言い難い。

BPPは、この10 Point Platform and Program(10項目綱領)で、黒人は給与の高い職業に就けず、たとえ能力があっても企業は白人を優先してしまうシステムに対し、雇用機会均等を掲げ、警察官に不当逮捕・投獄させられた黒人たちへの即時釈放を求める条項を起草した。また黒人コミュニティの資本搾取を否定し、黒人資本による黒人経営を確立させ、Black owned business(黒人のためのビジネス)を行うことを主張した。さらに適切な住宅の提供、ブラック・ヒストリーの教育拡大、ゲットー(低所得者地域)の子供たちへの教育の機会均等を掲げた。

そしてBPPにとって最も重要なものであり、また足枷となったのは、警察、国家権力に対する自己防衛手段として自衛団の結成、Police Brutality(警察暴力)の即時終了、黒人に対する公平な裁判への改革であった。それは革命軍やレジスタンスの様相を呈しており、国家権力はやがて彼らを危険視することになる。(※military service結成の項目は、後に医療保険の無料提供に改編された)

10 POINT PLATFORM AND PROGRAM(10項目綱領)

We want freedom. We want power to determine the destiny of our Black Community我々は、自由を要求する。黒人コミュニティーの運命を決定づける力を要求する。                                                  
We want full employment for our people.我々は、完全な雇用を要求する。
We want an end to the robbery by the white men of our Black Community.我々は、白人(資本家)による搾取の終わりを要求する。
We want decent housing, fit for shelter of human beings.我々は、人間が住むに値するまともな家を要求する。
We want education for our people that exposes the true nature of this decadent American society. We want education that teaches us our true history and our role in the present day society.我々は、衰退したアメリカ社会の真実を暴く教育を求める。我々は、本当の歴史と現代社会の役目を学ぶことができる教育を要求する。
We want all Black men to be exempt from military service.我々は、すべての黒人の兵役免除を要求する。
We want an immediate end to POLICE BRUTALITY and MURDER of Black people.我々は、警察暴力と殺人の即時終了を要求する。
We want freedom for all Black men held in federal, state, county and city prisons and jails.我々は、連邦、州、郡、市刑務所、監獄に収監されているすべての黒人の釈放を要求する。
We want all Black people when brought to trial to be tried in court by a jury of their peer group or people from their Black Communities, as defined by the Constitution of the United States.我々は、合衆国憲法の規定通り、同胞又は黒人コミュニティ出身の陪審員によって採決されることを望む。
We want land, bread, housing, education, clothing, justice and peace.我々は、土地、食事、住宅、教育、衣服、正義と平和を望む。