2月16 日、ニューヨーク・ブルックリン出身のカリスマラッパー、TALIB KWELI(タリブ・クウェリ)のインスタグラムでデトロイトの女性詩人JESSICA CARE MOORE(ジェシカ・ケア・ムーア)をゲストに迎えてのこのほど初出版となる『VIBRATE HIGHER』のリーディング・イベントが開催された。ジェシカ・ケア・ムーアも昨年リリースした詩集『WE WANT OUR BODIES BACK』のポエトリー・リーディングも披露した。
詩人ジェシカ・ケア・ムーアは、1996年、ニューヨークの「IT’S SHOW TIME IN APOLLO」出演「Black Statue of Liberty」(黒人の自由の女神)のポエトリー・リーディングにより各メディアから注目された。当時ニューヨークのアンダーグランド・ヒップ・ホップシーンで、タリブ・クウェリはモス・デフ(現:ヤシーン・ベイ)と共に地元ブルックリンでNIKARU BOOK STORE(現在は、アフリカン・アメリカンの人々を対象としたヘア・サロン)を立ち上げ、詩の朗読、フリースタイルなどオープン・マイク・イベント開催していたが、その頃よりお互いが旧知の仲だった。
タリブ・クエリとDJ HI-TEK(DJハイテク)のユニットREFECTION ETERNAL(リフレクション・エターナル)のファースト・アルバム『A TRAIN OF THOUGHT』(トレイン・オブ・ソート)の「GOOD MORNING」ののリリックに「We chasin death carelessly like Jessica Care Moore Who said, “Just because no one can understand how you speak /Don’t necessarily mean that what you be sayin is deep”」(俺たちは死を軽く見すぎる/ジェシカ・ケア・ムーアが言っていたよな/「誰も先人が伝えたことなんて理解できないし深い意味があるわけじゃない」と、彼女の言葉を引用している。ジェシカは97年メジャーな出版社に頼ることなくインディペンデント・パブリッシング「MOORE BLACK PRESS」を立ち上げ、白人中心のアメリカ出版界と距離を置いた。一方でジェシカは、デトロイト出身であり、テクノ/クラブシーンのミュージシャンと積極的にコラボを行い、また日本のクラブミュージック・グループSILENT POETS(近年、「POET MEETS DUBWISE」のパンチラインを落とし込んだ同アパレル・ブランドが評判)の楽曲にも参加している。
今回のリーディングイベントでジェシカは新作「WE WANT YOUR BODIES BACK」の内容については、アメリカ社会にはびこる白人中心主義、警察の黒人に対する抑圧、先立った黒人アーティストたち へのリスペクト、黒人女性に対する偏見など彼らたちの偉業を取り戻し、彼らの肉体を現在に取り戻すことを背景として描いた。タリブとともに2014年、18歳の黒人少年MICAEL BROWN(マイケル・ブラウン)が警察官に射殺された事件を受けて、ミズーリ州ファーガソンの抗議運動に参加したのは記憶に新しい。タリブは今作『VIBRATE HIGHER』の一部を朗読。彼の出発点であるモス・デフ(現:ヤシーン・ベイ)とのヒップ・ホップユニット、ブラック・スターの活動、ヒップ・ホップとスポークン・ワーズ、ポエトリーリーディングの関連性を追及し、ヒップ・ホップとアカデミックの重要性を語る。またジェシカと同郷の故ヒップ・ホッププロデューサーJ DILLA(ジェイ・ディラ)の音楽を「ジェームス・ブラウン級のアート」と絶賛した。動画のラストはジェシカのニーナ・シモン追悼の詩を朗読している。二人のリーディング、ブラックカルチャーの片鱗を覗かせてくれるストーリーは、貴重なレッスンの場としてこれほどいいライブはない。
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