2020年秋、詩人aja monet(アジャ・モネ)は、SNSの投稿で呼びかた。その名は「VOICES 」。このヴァーチャル・リスニング・ツアーと名の打ったイベントは、オンライン・イベントで登録すれば参加可能だ。
このエベントは、世界中のブラック・ウーマンやフェミニストそしてLGBTQの人たちと共に現在世界規模で問題となっている女性への性的暴力、性差別、人種優越主義、環境問題など議論し、また共有し、問題解決の糸口見つけるために発足したもの。劇作家Eve Ensler(イブ・エンスラー、現在の名は、V)の世界的作品で、女性への性暴力撲滅を訴えた『The Vagina Monologues』(「ヴァギナ・モノローグス」)にインスパイアされて始めた。
アジャはインディペンデントメディア番組「DEMOCRACY NOW!」(デモクラシー・ナウ)で性的暴行を受けた女性は1件の報告につき少なくとも15件は報告もせず泣き寝入りの状態であり、そして18歳に満たない女性が性的被害を受けている現状を語り、今こそ新しいムーヴメントが必要であるとインタビューに答える。
「ボイシズは、暴力や自由をテーマに、人とその関係を聞き出すこと、私たちの見聞き実践する世界を想像し、真実を話したり伝えることがボイシズの目的なのです。また人々が積極的に見聞きする行為をどうしたら実行に移せるかという問いに対し、芸術はどういう役割を果たせるのか? 話している人々に私たちがどのように関与し、この瞬間に思いやりと集団的ケアをどのように示すことができるか」。アジャは詩人として特に詩やエッセイなどアートフォームを作り出すことにによって、女性たちのその苦しい体験を少しでも精神と自由の解放を目指すことができると訴える。
ここで詩人アジャ・モネを少し紹介しておこう。
アジャ・モネは、アメリカで活躍する詩人だ。スポークン・ワーズ、ポエトリー・リーディングの世界では言わずと知れたブルックリン出身のアフロ・キューバン(ジャマイカとキューバのルーツを持つ)女性。19歳の時、ニューヨークの詩の朗読を主体とするクラブ、ニューヨリカン・ポエッツ・カフェでグランド・スラム・チャンピオンになった。彼女が作り出す黒人女性としての奥深い心情を表現したポエトリー(詩)は、フェミニズム、ジェンダー、人種問題をはじめとした社会問題をテーマにしたものが多い。2009年インディーレーベルからファースト・ポエトリーブック「The Black Unicorn Sings」でデビューした。2015年6月セカンド・ポエトリーブック「Inner City Chant&Cyborg Cyper」は、ブラック・コミュニティに広く知られることとなった。2014年夏の音楽イベントCelebrate Brooklynでは、グラミー賞受賞者のジャズピアニスト、ロバート・グラスパーやヒップ・ホップ・アーティストのタリブ・クウェリと共演している。
2016年、ブラック・ライブズ・マター運動の最中に草の根運動をする中で発足した非営利組織DREAM DEFENDERS(ドリーム・ディフェンダーズ)のリーダーPHILIP AGNEW(フィリップ・アグニュー)と共にフロリダに芸術の推進を目指すSMOKE SIGNAL STUDIO(スモーク・シグナル・スタジオ)を開業、ラッパーYASIIN BEY(ヤシーン・ベイ、前名モス・デフ)など出演を果たした。現在、アジャは、当イベント「ボイシズ」の他、世界中の詩人を招聘したバーチャル。リスニングのポエトリー・リーディング・イベント「HOMEMADE:POETIC REMEDIES FOR THE TIMES」(ホームメイド:詩を求める時間)を定期的に開催している(HOMEMADE:POETIC REMEDIES FOR THE TIMES:https://youtu.be/HaKTW0kpXq8)。マヤ・アンジェロウ、ニッキ・ジョバンニ、リタ・ダブ、オードリー・ロードなど、かつて黒人の意識改革、ブラック・パワー、公民権運動などの人種闘争に明け暮れた偉大な詩人達の血脈を受け継いだ彼女は、現代の米国社会でも根強く残るレイシズムに対して真っ向から挑戦する。アメリカ現代詩を語る上でもっとも重要な女流詩人だ。
そんな彼女が、今回立ち上げたプロジェクト「VOICES」。
ウェブサイト(https://voices.vday.org/)の投稿ページでは、「あなたの身に起きた現象を送ることができる。詩、散文詩、エッセイにして、また俳句にしてもいい。世界中の人達と共有して、新たな人生の活力になればいい」と記載されており、誰でも参加できる。
なお定期的に開催されるヴァーチャル・リスニング・ツアーには社会活動家、俳優、女優、ラッパーなど、ゲストは多岐に渡る。今まさに注目すべきコロナ時代の新しい社会運動に身を委ね体験してみてはいかかでしょう.。